月にはうさぎがすんでいます。 白いうさぎと黒いうさぎがすんでいます。
むかしのこと。 白いうさぎと黒いうさぎは一緒におもちつきをしました。いっしょうけんめいについたので、いっぱいのおもちができました。 「さあ、きなこもちをつくろう」 白いうさぎが言いました。 「えっ、あんころもちがいいよ」 黒いうさぎが言いました。 きなこもちにしよう、と白いうさぎは言い張りました。 あんころもちにしよう、と黒いうさぎは言い張りました。 どちらもゆずらなかったので、白いうさぎはおもちの半分を、黒いうさぎはあとの半分をもちかえりました。白いうさぎはおもちにきなこをまぶし、黒いうさぎはおもちをあんでくるみました。
白いうさぎは気がおさまらなかったので、自分だけでおもちつきをして、たくさんのきなこもちをこしらえました。そして、たくさんのきなこもちをたくさんのお皿にのせて、あたりにならべて見せつけました。 黒いうさぎは負けてなるものかと、自分だけでおもちつきをして、たくさんのあんころもちをこしらえました。そして、同じようにたくさんのお皿にのせて、同じようにならべて見せつけました。 白いうさぎは意地になって、もっとたくさんのきなこもちをこしらえました。けれども月はどこもかしこもおもちの皿でいっぱいでした。そこで白いうさぎは、はしっこのあんころもちを食べてしまい、そのあとにきなこもちを置いていきました。 黒いうさぎは腹を立てて、さらにたくさんのあんころもちをこしらえました。けれどもやはり空いている場所はありませんでした。そこで黒いうさぎは、はしっこのきなこもちを食べてしまい、そのあとにあんころもちを置いていきました。
月のこちら側がきなこもちでいっぱいになると、満月だね、と人は言います。 月のこちら側があんころもちでいっぱいになると、新月だね、と人は言うのです。